「陸上を歩く魚」の誕生

今、21世紀の科学や文明について本を書いているが、論文を書くのとは勝手が違い歩みは鈍い。17世紀のガリレオから始まり、ようやく18世紀が終わり、ダーウィンにたどり着いたところだ。先週は18世紀から19世紀から活躍した生物学者である「ラマルク」についてのさまざまな本と格闘していた。しっかり調べると、ずいぶんラマルクを誤解していたことと分かった。「後天的に獲得した形質が遺伝していく」との説明、「...

今、21世紀の科学や文明について本を書いているが、論文を書くのとは勝手が違い歩みは鈍い。17世紀のガリレオから始まり、ようやく18世紀が終わり、ダーウィンにたどり着いたところだ。先週は18世紀から19世紀から活躍した生物学者である「ラマルク」についてのさまざまな本と格闘していた。しっかり調べると、ずいぶんラマルクを誤解していたことと分かった。「後天的に獲得した形質が遺伝していく」との説明、「生物は目的に合わせて身体変化を誘導する力を持つ」と認める生気論の説明などを鵜呑みにし、表面的に見ていた。しかし、今は完全に見方を改めた。ラマルクは、環境に合わせた適応の結果として生物の変化が見られるという「環境決定論者」だったようだ。そんな時、環境により必然的に決まる形態について研究しているカナダのオタワ大学、マギル大学からの論文に出会った。論文のタイトルは「発生の可塑性(かそせい=変動できる性質のこと)と四足類の起源(Developmental plasticity and the origin of tetrapods)」。有力科学誌であるネイチャー誌オンライン版に掲載された。

育てる条件で骨にも変化が

この研究では、遺伝子の変化による進化とは別に、身体の構造が必要に応じてどこまで変わるかを調べている。「陸上を歩く魚」をテーマとして調べている。 哺乳類を含めた「四足類」が、「魚類」から進化してきた過程を理解しようとしているのだ。明確な問題を設定し、それに対する豊富な知識とアイデアがあれば、お金を使わなくても良い研究ができると示した典型だろう。 魚類から四足類への移行過程に対する現代のアプローチは、四足類への進化と対応すると思われる現存の魚類「ポリプテルス」から「肺魚」までのゲノムを比べることが主流になっている。確かにシーラカンスのゲノムを調べるような研究の進展は著しい。 しかし、ゲノムの持つ情報に基づいて、生物の全体の形がどのような変化を見せるか、そのダイナミックな変化を対応させる研究は道半ばだ。 今回の研究では、過程の形態変化に必然的ルールがないかを問題にしている。このためには、水中でも陸上でも育てられる歩く魚が必要になった。 この条件に適う魚として、肺が発達して陸上生活が可能になったばかりの種、「ポリプテルス」を選んでいる。実際にはここまでで研究の大半は達成できている。 実験では、水中で育てたポリプテルスのグループと、陸上で育てたポリプテルスのグループの2つのグループに分けて、陸上歩行という機能と、それを支える身体の構造について比べている。 言い換えると、陸上という条件の下で決まる「必然的な形態変化」を明らかにしようとしている。 結論は明確だ。水中で育ててから歩行させたポリプテルスと比べると、生まれた時から陸上で育てたポリプテルスは、歩行のためのヒレの使い方が全く変化し、陸上歩行という機能が進化していると分かる。 ヒレを支える鎖骨の構造も、この機能を支えられるように変わる。何よりも、陸上で育てるとこの構造の多様性が大きく低下して、同じ形態へと収れんしてくる。一方、水中で育てると形態の多様性は大きい。すなわち、機能と形態が一定状態に収れんしているのだ。 最後に、この収れんへと向かう形態が、デボン紀の四足類への進化の過程で起こった形態変化、すなわち化石に残るケイロレピスからエウステノプテロンに至る鎖骨進化とそっくりであると示している。 この論文ではこの結果を「形態のこの可塑性は遺伝的な変化を伴った大進化にも必ず貢献しているはずだ」と淡々と述べている。雄弁に議論を展開するのは避けているようだ。

21世紀の生物学の課題がここに

しかし議論を展開しなくとも、著者らが込めた気持ちは理解できる気がする。 私は読んだ後、ゲーテからラマルクに至る形態の「機能的必然性」を中心においた進化思想(異論はある分類法とは思うが)と、ダーウィンに代表される「偶然的多様化」を中心においた進化思想が、もう一度、互いに眼差しを交換しているような興奮を感じた。 形態も機能も、そして遺伝情報も1種類の物質で決定付けられるような性質ではない。「非物質的性質」である。とすると、この非物質的性質の相関関係を、いかに物質的性質を通して説明できるかは難しいが重要な課題となる。ここにこそ21世紀の生物学の課題がある。 21世紀に向かって生物学が着実に進んでいるという実感を持った。

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